あの頃が懐かしい。
一緒に笑いあった日々も。
幼き日に励まし合った時間も。
全ては、過去の思い出――。
想い出を辿って
真央霊術院。
久々にやって来たここの中庭の桜は満開だ。
「随分と、きれいなもんスねぇ……」
一人呟いた台詞は優しく吹く風に乗っていきそうだった。
ほとんどが淡い桃色で埋まる視界の端に人影が見えた。
その人はアタシから十数メートル離れた桜の下に腰を下ろしている。
不意にそちらにを足を進める。
こちらの気配に気付いているのか、いないのか。
いや、気付いているんでしょうに…。
アナタはいつもそうだ。
人が近付いても背を向けたまま、ただ黙り込んで。
何かあった時は必ずそうしていた。
今でも、その癖はあのままなのか…‥。
不意に意識が懐かしく温かかった過去へと遡ってゆく。
振り向かなくったって分かる。
いつだって一緒にいた人だから。
そして、いつも…追っていた人だから。
その人は――――――
「 」
ただ一言、名前を呼ぶ。
前方より吹き抜ける風と共に、器用に束ねた黒髪を揺らしながら彼女が振り返った。
久々の再会だ。
長いこと、逢っていなかった。
刹那その瞬間。
アナタと出会った日から、丁度アタシがここにいる今現在までの記憶。
それらがものすごい勢いで脳裏を過ぎっていった。
「 」
もう一度、彼女の名を呼ぶ。
過去の二人の想い出を辿りながら名前を口にする程に、幻の様な錯覚から確信へと変わっていった。
「き、……浦原隊長」
「…どーしたんスか、そんな所で」
そう言いながら、彼女の隣に腰を下ろす。
はアタシの名前を口にしたまま、また下を向いた。
「また何かあったんでしょうに……」
ため息混じりに空を仰げば。
「……さすが、浦原隊長!」
ははは、と明るく笑っては顔を上げた。
さっきまでの陰気さはどこ行ったんです、と言いたげな喜助の顔。
「全く、アナタって人は………」
「はははは、相変わらずですねぇ」
「アタシだと分かったから、ワザとこうしていたんスか……」
「見事引っ掛かってくれましたねv」
いつも…はぐらかしては、はぐらかされ。
それは、アタシにとって結構な唯一の安らぎの時でもあった。
目の前で楽しそうに笑う。
昔、いつでも隣で見てた笑顔。
それはまだアタシらが真央霊術院で勉学を共にしていた頃のこと。
でも、あの時とは少し違う。
彼女はアタシのことを
「喜助」ではなく、「浦原隊長」と呼び、そして多少なりとも敬語を使って話してくる。
時の流れとは、随分と残酷なものだ。
「……でも、考え事しにここに来ていたのは確かですけどね」
そう言い、は前を見据えた。
「それより、隊長。 お元気でした?」
ほら、またそうやって他人行儀。
「まぁ……「「相変わらずっスね」」…!?」
きっとまたアタシは驚いたような顔でもしているんでしょう。
アタシが言おうとしたことをは一文字も間違わず言ってのけたのだ。
「………『相変わらずっスね』って。 …そう言うと思った」
嬉しそうに、けれどどこか寂しそうに、
アタシの顔見つめては昔の思い出を辿っているであろうの顔を見ては。
胸を締め付ける何かがあった。
「あの、?」
どうしてこれ程までにも温まるのか。
「頼みがあるんですが……」
と話していると
「聞いてもらえますかね………?」
心が、温かい。
心底落ち着く。
「 えぇ 」
自分の居場所だと、
自分の居場所であれたらいいと。
「…………あの頃の二人に戻れないっスかね…」
心の底から、そう思う。
丁度、さんも喜助さんのことを考えてたんでしょうね。
確か一年くらい前に書いたお話。 桜の季節でした。
当時の自分としては頑張ったかも…(苦笑 頑張ってコレかとか突っ込まないで下さいまし。
桜に喜助さんは似合いますよね〜v