健康とわたしを結ぶのは、野菜。
先生と、わたしを結ぶのも――――――。
野菜と私と先生と
「―……。」
目の前にあるお皿と、只今奮闘中。
いけないとは知りながら、くわえ箸をして。
ただじっと、テーブルの上に乗っているお皿を見つめる。
「……むー。」
そのお皿の上に乗っているのは…。
―野菜。
「……やっぱり食べたくないな。」
レタスに、キュウリの千切り。
彩りを整えるようにある、ミニトマト。
何を隠そうわたしは、大の野菜嫌いなのだ。
「………でも。先生との約束だしな〜。」
上忍師であるカカシ先生は、野菜嫌いのわたしの将来を見越して、ちゃんと毎日食べるように促す。
いくら先生に言われたって、嫌い物は食べたくないのがホントのところ。
今までは家に帰れば誰もいないのだから、ついつい後回しにしてしまっていた。
けれど、事が始まったのは、ひと月前辺り。
家に戻って玄関のドアを開けたら、何の前触れもなく、エプロンを着けてお玉を持ったカカシ先生がいて。
「おかえり〜。」なんて言われた時にはひどく驚いたのを覚えている。
それからと言うもの、今では神出鬼没に現れて料理を作ってくれることは大分減ったが。
わたしが夕食を取る頃になるとやって来て、野菜を食べたかどうかチェックしていくようになったのだ。
「…けど、ヤだよねー……。」
人間、計画する時は少なからず無茶をするもの。
今日は昼の任務が上手くいったから機嫌も良くて。
夕飯の買い物をしている時、
青臭いセロリもちゃんと食べる!なんて意気込んで買い物カゴの中にそれを入れてしまったのだ。
いざ、サラダとして迎え撃つと……敵も、なかなか…。
そんな時―。
「ちゃんと食ってるかー。」
コンコンと窓を叩く音がしたかと思えば、そんなちょっとくぐもった声が聞こえた。
ガラス戸一枚通しているせいだろう。
「…!せ、せんせ……。」
「入るぞ〜。」
そう言うと先生はベランダからガラス戸の敷居を跨いで部屋に入ってきた。
「いやいや、春先と言えど…まだ冷えるね〜。」
「…あ、こっち来て温まって下さいよ!」
カカシ先生は猫背を更に丸めている。
温かい飲み物でも持ってこようと席を立った時。
「ちょっと待った。…俺のことはいーから、、座って座って。」
「…は、はぁ。」
先生は野菜の残ったお皿のあるテーブルをジッと見ていた。
何だか嫌な予感がして。
先生とは視線を合わさずにいた。
「……んー、」
「あ!せんせ、あたしお茶入れてくるよっ。」
いくら、普段鈍いわたしだって。
あの間延びした声の後に、何を言い出すか…嫌でも分かったから。
機転を利かせたつもりで、台所の方へ180°体の向きを変えた。
けれど。
そんなの先生の前じゃ、何の意味も成さないことくらい…。
落ち着いて考えれば、承知の事実―。
すっと伸びてきた大きな手に、あっけなくわたしの片腕がつかまれた。
「誤魔化そうとしても、…ダメだぞ?」
ゆっくり近付いてきた先生の顔。
そこから唯一覗いている右目が、
きれいに弓なりに細められて笑っていた。
野菜がどうとか。
そんなの。
大したキャパシティーも収まらないわたしの頭の中からはすでに追いやられていて。
正直、近すぎる先生との距離に。
すべての意識を持って行かれていた――――。
「……ん?どーした。」
いや''どーした''じゃなくって。
どうしたらいいか、分からずに。
ただただ先生の顔を、目が離せず見つめてしまう。
それを先生がどう解釈したのかは分からないのだけれど…。
「あ゛〜……。」
「………え?」
「じゃ、。野菜食べたら…ご褒美に口直しのキスしてやるよv」
「………―!」
とんでもない事を抜かした目の前の銀髪上忍師。
先生とキスだなんて、想像もつかない。
そりゃ、ちょっとは憧れたりしていたけれど…それはまた別のお話。
「何なら今、景気づけに早速…」
そそくさと。 でも、どこかわたしの反応を楽しむかのように。
マスクに手を掛けようとした先生。
でも、何か先生の思い通りになってばっかりで悔しかったから。
「…ろ、ロリ…ロリコンっ!」
「…ちょっ……!」
これには流石の先生もショックだったらしく。
そのときの先生の顔はちょっとだけ面白かった。
でも、どうあったとしても…流石にロリコンではないと思うので。
わたしの年齢からしても確かに言える事だ。
「あー、もう先生、何にもしないで!余計食べられなくなっちゃうじゃない。」
先程までの恥ずかしさを紛らわすため。
気を取り直したわたしは、先生の手を払いのけてテーブルに着く。
わたしの性格上。
ややこしくなってきた事は、出来るだけさっさと片付けたい。
さて、覚悟を決めて挑もうか。
でもその前に。
「…えー。」
「''えー''、じゃないですよ…。」
わたしは、もっと厄介なものを相手にしなきゃならないらしい。
「…じゃ、キスもなし?」
「…………。」
何を言い出すのかという目で先生を見ると。
そりゃ残念、と肩をすくめて、下がり掛けていたマスクを引き上げた。
その様を見るに、さして惜しそうなものではなく。
本気なのか、遊んでいるのか。
わたしにはよく分からないのだけれど。
でも、何れにせよ。
先生と過ごすひとときが、わたしの中で心地良いものになっている以上。
何かちょっと先生のイメージは変わったけれど。
しばらくは今のままでもいいかな、なんて。
ちょっと、思ったりしてる。
当初予定していたEDとは全く違うものになりました(笑
もうちょっとマトモなカカシにするつもりだったんですが…。
それとこのお話のさんは、16・7で精神年齢低めってコトでお願いします!
そして、名前変換少なくてごめんなさいm(_ _)m
これでも増やしたんですよ;
出来上がり当初、さんのお名前は一度も出て来てなかったんです(苦笑