不思議と 心が あたたかいから
心の何処か いつも 安らいでいる私がいる
To tell the truth
「ねぇねぇ、キミ! 今、暇…?」
「良かったらオレ達とお茶しねェ?」
何てベタな。
テレビドラマとか、とにかく話の中だけのことだと思ってた。
「な? ホラ、早く行こうぜ…連れもいねェんだからよ!」
だから、断って早いところ逃げなきゃいけないことくらい、分かっていたのだけれど。
妙な焦燥に駆られて、足が動かなかった。
まさか、自分がこんな場面に居合わせる日が来るなんて。
「……ッ、やめて下さいっ!!」
「…へぇ〜、かわいい顔して結構力あるんだね…中忍くらいか? キミ」
腕を掴まれて、前後を囲まれた。
相手の男二人組は、風貌からして特別上忍、と言ったところだろうか。
彼らの手の出るスピードに目が追いついていかなかった。
マズイ、と思ったときには既に時遅し。
「男のクセに! 有り余る力をこんな風に使うなんて…ッ」
誰かさんとは大違い。
「男として最低よ!…あの人と同じ男とは思えないわっ」
後になってみれば、この状況にして私も随分饒舌だったと思う。
でも自然と、長身の、今想う人のシルエットが脳裏に浮かんだのだった。
「…んだと、コラ! こっちが下手に出てりゃ、しゃあしゃあと!!」
「''あの人''だァ? 連れもいねェくせによォ!」
一介の中忍の女に、鍛え上げられているであろう特別上忍の男二人。
高く振り上げられた手に、流石に怖いと思い、きつく目を閉じた―。
「………………」
力無くへたり込み、目を瞑ってしばらく。
自身の身に何の衝撃もないことを怪訝に思い、うっすら目を開けた。
「 この子の連れなら、ここにいるよ 」
私の前に佇む、一見頼りなさそうな猫背中。
それはさっき、頭に過ぎった人の姿だと知るのに時間はかからなかった。
「…ま!こいつのキツイ口調に、
ついつい誘いたくなっちゃうくらいのかわいさと不用心さは俺が侘びるけどさ」
「……ア、アンタは、」
「カ、カカシ上忍…!!?」
そーだよ よく知ってるね、なんて呑気に返事を返す銀髪上忍。
腕を掴み上げられている男達の顔が蒼白へと変わっていく。
「だからって、人の女に手ェ出されちゃっても困るんだけどねェ…」
分かってるよな、と。
戯けた口調から一変、声のトーンまでかなり下がった。
背中越しだが、嫌でも伝わってくる彼の凄み。
「「 ひ、ヒィッ 」」
男のものとは思えないような声が上がって。
瞬身の術でも使ったのだろうか。 次の瞬間には二人の気配は消えていた。
まぁ…そこは腐っても、特別上忍。 お見事だった。
ふうっ、と溜息が聞こえて、私の意識は現実に引き戻された。
「……カ、カカシさん」
「…ったく、お前はね……」
腕組みをして、背を向けたまま顔をこちらに向けたカカシさん。
唯一表情を伺うことの出来る彼の右目を見れば、明らかに…呆れていた。
「ケガは…?」
「………ないです」
何だか。
「…なら、いいんだけどさ。 、お前は人に安易に近付きすぎ!」
「……はぁ」
「はぁ、じゃナイの。 ホントに分かってる…?」
何だか会話がぶっきらぼうで。
彼はしゃがみ込んで、私の目線を同じくして問いただす。
カカシの口調もあからさまに呆れを含んでいる。
怒らせて しまったんだろうか。
「……ごめん」
けれど、返事が返ってくることはなくて。
更には、黙って立ち上がり背を向けられてしまった。
「…ごめ、んな さい……」
先程までの恐怖感と突然の安心感。
そして、この場の空気。
全てが織り混ざり、涙となって溢れ出した。
「あー、もう……」
頭に優しい手の感触を感じた。
顔を上げれば、また彼の視線が私と同じくされていた。
「…違うよ。 に何もなくて、良かった」
心底焦って、そして今やっと安堵したと言うべきか、今にも折れてしまいそうと言うべきか。
今まで見たこともないような、カカシの苦笑いだった。
「心配したでしょ…」
でも あの口調はどんなときでも健在なようで、と言ったカカシは
次の瞬間にはまたいつもの彼に戻っていた。
「ほら、おいで」
すくっと立ったカカシが手を差しのべてくれて。
「…泣かない泣かない」
「……っく、カカシィ さん。……怖かったぁ」
「ホラ、俺がいるんだから、もう大丈ー夫!」
覚束ない足取りで立ち上がれば、しっかりとカカシさんが抱き留めてくれた。
「怖かったでしょ…。 早く来てやれなくて、ごめんな…」
''ごめーんね?'' じゃなくて ''ごめんな'' だなんて。
それなりの彼の心境が伺えるようで、自惚れていいものかと少々悩む。
優しくて、穏やかな彼の低音は耳に心地よくて。
触れている彼の広い胸から響いてくるようだった。
「だけど、も!
いつも俺が駆け付けてやれるとは限らないんだから、もう少し気を付けなきゃダメだよ?」
「……以後、気を付けマス」
「よし、ごーかっくv」
と言いつつ、
''本当に気を付けて''と念を押す彼に不謹慎にも愛しさが込み上げ笑ってしまった。
だって、嬉しくて仕方がないから。
「じゃー、ま!帰ろっか、って言いたいところなんだけど……。」
「………任務ですか?」
そーなんだよ、と困ったように笑い、首の後ろに手をやるカカシさん。
「……じゃあ、カカシさんも…気を付けて下さいね。 帰り、待ってますから。」
私がそう言ったときのカカシさんの顔は、忘れられない。
任務までの時間が大分押し迫っていたようで、彼はそちらへ赴いて行ってしまったけれど。
だけど カカシさん?
私だって中忍なんだし それなりの覚悟ってもんはあるんです。
だけどね。
あなたの瞳に私が不用心に映る理由の一つに、
――――いつでも どんなときでも あなたが駆け付けてくれるような気がするから
なんて言ったら カカシさん。
あなたは やっぱり怒るのかな――――?
ベタですね。
最近あまりメインのカカシを更新していないので、
恥ずかしながら昔の駄文を引っ張り出してきました(苦笑)
もっとまともな話を書けたらな…。